うる星やつら Wiki

うる星やつら オンリー・ユー』は、高橋留美子原作の漫画及びテレビアニメシリーズの『うる星やつら』の劇場版オリジナル長編アニメーションである。1983年2月13日公開。

概要[]

アニメーション監督、押井守の実質上の劇場初監督作品。他の女に走る諸星あたるラムが追いかけるという原作初期の『うる星やつら』を彷彿させ、原作者の高橋留美子から絶賛された。だが、押井はこの作品を「完全な失敗作・大きいテレビ」と後に語っている。

公開対談で押井は「本来この作品は別の監督が就任して作業をしていたが、途中で降板したため、結局自分がやる羽目になった」という事を述べている。押井が参加した時点の制作状況は、原作者から示されたキャラクター「エル」のイラストと、メカデザインが数点と完成していた脚本のみで、それ以外は全く進行しておらず、期限は残り5ヶ月という最悪の状態でのスタートであった(その経験が押井の実写作品『トーキング・ヘッド』にも反映されているとのこと)。更に押井は脚本に不満を抱き、内容を改変したものをそのまま絵コンテに切っていった(そのため、完成脚本は存在しない)。プロデューサーや脚本家の金春智子からクレームが付いたが、既に期限が迫っており、結局押井の修正したストーリーがそのまま採用された。

このように、迫るスケジュールの中で苦労して内容を破綻しないようにまとめ上げ、「うる星」の原作・TVにそれまで登場した主要なキャラクターが一堂に会し、ドタバタなラブコメディの展開をベースにしつつ、時空を股に掛けた壮大なスケールでラムを助ける形で活躍するなど、TVアニメの劇場版の王道ともいえるふんだんにファンサービスを加えた作風は原作者やファン、スポンサーからは歓迎された。だが、映画監督の金子修介曰く、伊丹十三(当時はまだ俳優)から「甘いケーキ菓子のような映画」と評され、初めて対談した宮崎駿からも批判された。ただし、テレビシリーズについては、宮崎は絶賛している。もちろん押井本人もダメな映画の例だと認識している。また、併映作品であった相米慎二監督の『ションベン・ライダー』が本作品と比べてあまりにも監督の自由が反映された作風であった事に、押井は衝撃を受けたという(ロマンアルバム「攻殻機動隊 PERSONA 押井守の世界」より)。これらの経験が、次回作の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』以降、押井の作家性を大きく打ち出すことに繋がってゆく。

ダスティン・ホフマン主演の映画『卒業』をイメージしたシーンは有名。また、ラムがあたるを「ダーリン」と呼ぶのと対照的に、エルはあたるを「ハニー」と呼んでいる。キャラクターデザインにおいても、ラムのスタイルをそれまでのテレビシリーズより更に良くしてある。

公開時、併映作品との関係から上映時間を短くすることとなり、一部シーンがカットされている。後にファンの声に応えて完全版として再上映、LD・DVD販売などがされている。だが、このノーカット版を『プロデューサーズ・カット』と揶揄する押井は「やっぱり長過ぎた」と後に語っている。

なお、この完全版でも収録されていない完成フィルムも多々存在する。一番尺が長いものは星間タクシー内でのメガネ達の宴会シーン(この映像は一部が予告編に収録)で、その他にも本編中盤まで細かい未使用カットがあり、それらについては公開当時発売されたフィルムコミック上巻に台詞入りで収録されている。

音楽を担当したのは、テレビシリーズにも参加した安西史孝で、当時、1千万円と高価だったシンセサイザー『フェアライトCMI』を用いBGMを演奏、独特な音色でこの作品世界を表現している。また、当時は珍しかったオーケストラル・ヒットを使用(エル星の牛丼屋のシーンなど)した。他にも、原作者・高橋留美子の叫び声をサンプリング・加工し、BGMとして使用(面堂家、エルの庭園、エル星での暴動のシーンのBGM)し、実験的な試みを多くしている事も特色である。

あらすじ[]

影踏み遊びをするシルエットの少年と少女。影踏みに勝ったと主張する少年は、少女から11年後に結婚しようと告げられる。そして少女は宇宙へと去っていった。

ある日、あたるのクラスメイトやラムの友人達に、あたるとエルという女との結婚式の招待状が次々と届けられた。あたるには「エル」という宇宙人の婚約者が既に存在していたのだ。あたるはラム親衛隊のメガネ達から拷問され、三宅しのぶからは凄まれ、面堂終太郎は私設軍隊を引き連れ、ついにはラムが電撃を出してまで問い詰められるが、あたるはそんな記憶は全くないと言う。しかしエルからの使いが来ると、いつもの浮気癖を出したあたるはあっさり約束を受けた。

ラムは事情を聞いて地球に来た弁天と相談し、あたるとあたるの両親をはじめ、面堂・しのぶ・サクラ・錯乱坊・ラム親衛隊らの友引町のメンバーをバス型UFOに巻き込んで宇宙の果てへ飛び立つ。宇宙空間でラムの両親や、弁天、海王星のおユキ、ラン、レイ、クラマ姫などと合流し、エルよりも先にあたると結婚式を挙げようとしたのであるが、その前にあたるを奪いに来たエル星の軍隊が待ち構えていた。激怒したラムの父はエル軍との宇宙戦争を宣言。交戦開始寸前の状況まで発展するが、その隙にエル星のスパイであるロゼの手により、あたると出席者の面堂やメガネ達までが連れ去られてしまう。ラムはあたるを取り戻すため戦闘機に乗り追跡するが、修理中であったこの機体は失速して自爆してしまう。「ラム!」爆発を見たあたるはラムの身を案じて叫ぶが、ラムが救出カプセルで脱出し一命を取り留めたのを見て胸をなでおろした。しかしラムは、ついにあたると引き離されてしまう。

エルは、エル星の女王であった。結婚をすれば当然「王」となれるあたるは、ハーレムが作れると有頂天になる。ところがエルに気に入られた面堂が、エルの宇宙中の美少年コレクションの10万人目として、コールドスリープされかける。エルのそんな恐ろしい秘密を知ってしまったあたるは、「浮気者」とエルを罵り、婚約破棄を申し出た。ところがエルは、あたるだけは自分と対等に接してくれる特別な人だと言い、嫌がるあたるを結婚式の日まで、巻き添えを食ってエル星まで来ていたテンと共に無理矢理幽閉してしまう。そんな孤独感の中、あたるは牛丼を貪り食いながら、ラムの愛情を感じ始めていた。

一方、母星に帰還したラムもあたるへの想いを断ち切れず、あたるを奪還するため、挙式当日に変装して招待客に紛れてエル星に潜り込む。ラムの決意に気づいた弁天、おユキ、ラン、レイ、クラマ達も後を追ってエル星に潜入し、繁華街や各地で大暴れ。コールドスリープされていた美男達も解放するなど暴動を起こしてエル軍の警戒を引きつけている間に、ラムはあたるのいる式場へと向かい、あわやのところで挙式に乱入する。ラムの呼びかけに応え、無事救出されたあたるは、逃げ出してきた面堂や弁天たち一同と一緒にバスUFOで脱出へ。しかし、あたるにしがみついていたエルも一緒に引き連れて来てしまい、バスUFOの運転手のミスで過去へとタイムワープしてしまう。一同が飛んだのは奇しくも11年前。そこへ待ち受けていた光景は、夕暮れの公園で無邪気に遊ぶあの幼き日のあたるとエルの姿であった。そこであたる達は、エルとあたるの影踏みの契りに伴う「真実」を知る。

スタッフ[]

  • 原作:高橋留美子
  • 監督、脚色、絵コンテ:押井守
  • 演出:安濃高志
  • 脚本:金春智子
  • キャラクターデザイン:高田明美、高沢孫一
  • 作画監督:青嶋克己、遠藤裕一、高沢孫一
  • メカニック監督:山下将仁
  • 撮影監督:若菜章夫
  • 音楽:小林泉美、安西史孝、天野正道
  • 音楽監督:早川裕
  • 製作:多賀英典
  • 企画:落合茂一
  • 企画協力:岡正
  • 製作:キティ・フィルム
  • 配給:東宝

主題歌・挿入歌[]

主題歌
  • 「I, I, YOU & 愛」
    • 作詞:安藤芳彦/作・編曲・歌:小林泉美
挿入歌
  • 「ラムのバラード」
    • 作詞:實川翔/作・編曲:西村コージ/歌:平野文
  • 「星空サイクリング」
    • 作詞、作・編曲、歌:ヴァージンVS
  • 「影ふみのワルツ」
    • 作詞:安藤詩織/作・編曲:西村コージ/歌:詩織

映像ソフト化 []

本編のDVDは、『犬夜叉 時代を越える想い』の公開を記念し、ノーカットバージョンで2001年12月19日発売。

登場人物・声の出演[]

※原作・テレビアニメに登場しているキャラクターについては個別項目およびうる星やつらの登場人物を参照。

ゲストキャラクター[]

エル・ド・ローゼンバッハ
声:榊原良子、詩織(幼少期)
エル星の888代目女王。11年前地球にやってきた時に、当時6歳だった少年あたると影踏みをやって遊んだ。あたるがエルの影を踏んだため、「影を踏んだら私と結婚しなくてはならない。11年後必ず迎えに来る。」と言い残して去って行った。その後鬼族との激戦の末、あたるをラムから奪い取る。あたるもエルの美しさに一時期ラムのことも忘れ心躍ったが、彼女には色男をコールドスリープにかけ、自分のコレクションにするという恐ろしい趣味があった。それを知ったあたるにもはやエルに対する愛情はなく結婚も白紙に戻すとまで言われたため、結婚式当日まで、牢に閉じ込めた。結婚式当日、弁天、お雪、ラン、レイ、そしてラムの暴動により結婚式は中断され、混乱に乗じて過去に連れて行かれ、11年前の影踏みの真相を知ることになる。後に、実際はあたるは影を踏んでいなかったことが発覚し、結婚は無効となった。劇中あたるのことを「ハニー」と呼んでいた。
ババラ
声:京田尚子
エルの乳母。あたるの事はあんまりよく思っておらず、「どうしてこんな男がいいのか。」と悩んでいた。弁天から「ババラばばあ」と呼ばれていた。
ロゼ
声:丸山裕子
エルの教育係。スパイも兼ねており、ラムの後を付けたり、鬼族の艦隊に潜り込んであたるをさらったりしている。エル星にメガネ、終太郎、しのぶらまで連れてきてしまいひどいお叱りを受け、やけ酒に暮れる。
司令官
声:青木和代
エル星での暴動を鎮圧するために部下に指示をしていた。オーバーアクションが非常に目立った。他の隊員に比べ太っている。
ドライバー
声:桜庭裕一
バス型UFOの運転手。
子供A・B
声:鈴木一輝、藤枝成子
冒頭で影踏み遊びをするシルエットの少年と少女。

外部リンク[]

航法[]